マンションで水回りは移動できる?キッチン・トイレ・浴室の条件と確認ポイント
マンションのリフォームを検討するなかで、「キッチンをリビング側へ移動したい」「トイレや洗面所の位置を変えたい」と考えている方もいるのではないでしょうか。
マンションでも、条件が整えば水回りを移動できる場合があります。ただし、設備を置くスペースがあっても、希望する場所に移せるとは限りません。 配管を通せるか、建物の構造や管理規約に問題がないかなど、複数の条件を確認する必要があります。
本記事では、マンションの水回りを移動する際に確認したい条件を整理したうえで、キッチン・トイレ・洗面所・浴室それぞれの注意点を解説します。希望する位置への移動が難しい場合の代替案や、中古マンションの購入前に確認しておきたいことも紹介するので、水回りの間取り変更を検討している方はぜひ参考にしてください。
マンションでも水回りの移動はできる?
マンションでも、条件が整えばキッチン・トイレ・洗面所・浴室などの位置を変更できます。ただし、室内であれば好きな場所へ自由に移動できるわけではありません。
水回りを移動する際は設備本体だけでなく、給水管や給湯管、排水管なども新しい位置に合わせて変更しなければなりません。特に排水管は水が適切に流れるよう勾配を確保する必要があり、床下のスペースや既存の配管との位置関係によって移動できる範囲が変わります。
さらに、マンションには専有部分と共用部分があるほか、建物構造や管理規約による制限もあります。同じような広さ・間取りでも、水回りを移動できる範囲は物件ごとに異なります。
そのため「キッチンなら○mまで」「洗面所なら○mまで」のように距離だけで判断するのではなく、配管、床下スペース、建物構造、専有部分と共用部分の区分、管理規約などを確認したうえで、個別に判断する必要があります。
希望する間取りがある場合は、必要に応じて現地調査を依頼し、実現できるかリフォーム会社に確認してもらいましょう。

水回り移動を制限する4つの理由
マンションの水回り移動には、主に以下の4つの条件が関わります。
- 専有部分と共用部分が分かれている
- 給水・給湯管だけでなく排水管もつなぎ直す必要がある
- 排水管に必要な勾配を確保しなければならない
- 床下スペースや建物構造によって配管経路が制限される
それぞれの理由について見ていきましょう。
①専有部分と共用部分が分かれている
マンションには、各住戸の所有者である区分所有者が単独で所有する「専有部分」と、区分所有者全員で共有する「共用部分」があります。
たとえば、購入したマンションの一室を所有している場合、その住戸の所有者が区分所有者にあたります。専有部分は住戸内のうち個人が所有する範囲を指し、共用部分には廊下や階段、エレベーターなど、マンションの所有者全員で共有する部分が含まれるのが基本です。
リフォームの対象となるのは基本的に専有部分ですが、住戸の内側にあるものがすべて専有部分とは限りません。床や壁の内部、配管などには共用部分に該当する箇所もあるため、水回りを移動する際は注意が必要です。
②給水・給湯管だけでなく排水管もつなぎ直す必要がある
キッチンや洗面台などを移動する場合は、新しい位置まで給水管・給湯管・排水管を通さなければなりません。なかでも移動範囲に影響しやすいのが排水管です。
給水・給湯は水圧によって水を送ります。一方、排水は一般的に、配管に勾配をつけて自然に流します。そのため、新しい設備の位置から既存の排水先まで、配管を通せる経路が必要です。
たとえば、キッチンを置きたい場所に十分な広さがあっても、そこから既存の排水先まで排水管を通せなければ、希望どおりに移動することは難しくなります。
設備を設置できるかだけでなく、そこまで給排水管を通せるかが重要な判断材料です。
③排水管に必要な勾配を確保しなければならない
排水管を通す経路があっても、排水が流れるだけの勾配を確保できなければ、希望する位置への移動は難しくなります。 水回り設備から排水先までの距離が長くなるほど、必要な高低差を確保しにくくなる場合があります。
たとえば、キッチンを既存の排水立て管から離れた場所へ移動しようとしても、床下に十分な高さがなければ、必要な勾配をつけた排水管を納められません。このような場合には、床の高さを上げて配管スペースを確保する方法もあります。
ただし、床を上げれば天井高や隣接する部屋との段差などにも影響するため、配管だけを見て判断するのではなく、室内全体への影響も考慮することが必要です。
④床下スペースや建物構造によって配管経路が制限される
排水管を通せるかは、床下にどの程度のスペースがあるかによっても変わります。床スラブと仕上げ床の間に配管を通せる空間がある場合もあれば、床下の空間が限られている場合もあります。
床下に十分な空間がない場合、配管の経路を変更できる範囲は限られます。 床を上げて配管スペースを確保する方法もありますが、天井高が低くなったり、隣接する部屋との間に段差が生じたりする可能性があります。
また、配管を通すために床スラブや梁などの構造躯体へ自由に穴を開けられるわけではありません。国土交通省のマンション標準管理規約では、天井・床・壁のうち、躯体部分を除く部分を専有部分とする考え方が示されています。実際の取り扱いは、そのマンションの管理規約と建物の状況を確認する必要があります。

キッチン・トイレ・洗面所・浴室はどこまで移動できる?
水回りを移動できる範囲は、既存の配管や床下スペース、建物構造などによって異なります。さらに、設備ごとに確認すべき条件も変わります。
ここでは、キッチン・トイレ・洗面所・浴室それぞれに固有の注意点を見ていきましょう。
キッチン|排水管・換気・電気・ガスなどを確認する
キッチンを移動する場合は、給水・給湯管だけでなく、排水管やレンジフードの排気ダクト、電気・ガスなど複数の設備を確認する必要があります。特に注意したいのが排水管です。
壁付けキッチンから対面式やアイランド型へ変更する場合、新しいシンクの位置から既存の排水管まで配管を延ばし、排水に必要な勾配を確保しなければなりません。そのため、排水先から離れるほど、床下の高さなどによって移動範囲が制限される可能性があります。
また、レンジフードを移動する場合は、新しい位置から既存の排気口までダクトを通せるかも確認が必要です。梁などによって適切な経路を確保できないケースもあります。さらに、ガスコンロを使用する場合はガス管、IHクッキングヒーターなどを導入する場合は電源や電気容量についても確認しましょう。
キッチンは本体を設置できるスペースだけで判断せず、給排水・換気・電気・ガスなどを新しい位置まで適切に接続できるかを確認することが重要です。
トイレ|汚水管との位置関係が移動範囲を左右しやすい
トイレを移動する際は、便器から出る汚水を排水するための配管を新しい位置まで通せるかが重要です。トイレを既存の汚水管や排水立て管から離れた場所へ移動すると、その分だけ排水管が長くなります。
また、排水を適切に流すための勾配も必要になるため、床下に十分な配管スペースがなければ希望する位置まで移動できない場合があります。必要な勾配を確保できない場合には、トイレの床を上げて配管スペースをつくるのも選択肢の一つです。
ただし、床を上げると廊下などとの間に段差が生じる可能性があるため、使いやすさも含めて検討する必要があります。また、トイレの移動では排水管だけでなく、給水管や換気設備なども確認が必要です。
既存の汚水管との位置関係を踏まえ、どこまで移動できるかを判断しましょう。
洗面所|給排水管と周辺設備を確認する
洗面台を移動する場合も、新しい位置まで給水・給湯管と排水管を接続する必要があります。特に大きく位置を変える場合は、排水に必要な勾配を確保できるか確認しましょう。
また、洗面所には洗濯機を設置している家庭も多いため、洗面所全体を移動する場合は洗濯機の給排水設備についても検討する必要があります。防水パンを設置する場合は、その位置や必要なスペースも考慮しましょう。
さらに洗面所は洗顔や身支度だけでなく、入浴前後の着替えや洗濯などにも使われます。そのため、単に洗面台を移動できるかだけでなく、浴室や洗濯機、収納との位置関係まで考えて間取りを決めることが大切です。
浴室|給排水・床下・換気など複数の条件を確認する
マンションで浴室を移動する場合は、給水・給湯・排水設備に加えて、床下スペースや換気設備など複数の条件を確認する必要があります。特に排水については、浴室から既存の排水管まで必要な勾配を確保できるかがポイントです。
床下の高さが不足している場合は、浴室の床面を高くするなどの対応が必要になることもあります。さらに、浴室の換気設備を新しい位置から既存の排気経路へ接続できるかの確認も必要です。
ユニットバスを設置する場合は、本体が納まる床面積だけでなく、床下や天井裏を含めて必要な寸法を確保できるかも確認しましょう。浴室は給排水・換気・設置スペースなど複数の条件が関係するため、希望する場所に十分な広さがあっても移動できるとは限りません。
建物の構造や管理規約も含めて、リフォーム会社に実現可能性を確認することが大切です。

水回りを移動するなら管理規約の確認が欠かせない
マンションで水回りを移動する際は、配管や建物構造だけでなく、マンションの管理規約や使用細則なども確認する必要があります。
技術的には施工できる工事であっても、マンションのルールによって工事内容が制限される場合があります。希望するリフォームを計画する際は、次のポイントを確認しておきましょう。
リフォームできる範囲を確認する
マンションの専有部分であっても、所有者が無条件に好きな工事をできるとは限りません。リフォームによって共用部分や建物全体、ほかの住戸などへ影響が及ぶ可能性があるためです。
そのためマンションによっては、管理規約や使用細則などでリフォームに関するルールが設けられています。水回りを移動する場合は、配管や床、壁などについてどこまで変更が認められているのか確認しましょう。
国土交通省が公表している「マンション標準管理規約」は、各マンションが管理規約を制定・変更する際の参考となるモデルです。 すべてのマンションにそのまま適用されるものではないため、実際にリフォームする際は、自分が住んでいるマンションの管理規約や使用細則などを確認する必要があります。
工事前の申請・承認手続きを確認する
水回りの移動を伴うリフォームでは、工事前に管理組合への申請などの手続きが必要になる場合があります。
国土交通省のマンション標準管理規約では、区分所有者が専有部分の修繕や模様替え、建物に定着する物件の取り付け・取り替えを行い、共用部分またはほかの専有部分に影響を与えるおそれがある場合、あらかじめ理事長へ申請し、理事会の承認を受ける考え方が示されています。
水回りを移動する場合は、新しい位置に合わせて給水・給湯・排水管などを延長・移設する配管工事が必要です。工事内容によっては床の解体や張り替えなどを伴うこともあるでしょう。
こうした工事は共用部分やほかの住戸に影響を与える可能性があるため、マンションの管理規約等に基づいて事前の申請や承認が必要になる場合があります。申請方法や必要書類、申請期限などはマンションによって異なるため、工事を計画する段階で管理会社や管理組合へ確認しておきましょう。
防音・工事時間・搬入のルールも確認する
マンションリフォームでは、工事内容以外にも守らなければならないルールが設けられている場合があります。
たとえば、床材を変更する場合には、管理規約や使用細則などで一定の遮音性能が求められることがあります。希望する床材を自由に選べるとは限らないため、水回りの移動とあわせて床を張り替える場合は事前に確認しておきましょう。
また、工事できる曜日や時間帯、工事期間、資材・設備の搬入方法などについてルールが定められているケースもあります。エレベーターや共用廊下を使用する場合は、養生などを求められることもあるでしょう。
さらに、工事前に近隣住戸への告知が必要となる場合もあります。水回りの設備や配管だけでなく、工事に関するルールまで確認してからリフォームを進めることが大切です。

希望する場所まで水回りを移動できない場合の代替案
配管や建物構造、管理規約の制限によって、希望する場所まで水回りを移動できない場合もあります。
そのようなときは、「どこへ動かしたいか」だけでなく、「移動によって何を改善したいか」から考え直すと、別の方法が見つかることがあります。
既存の配管に近い範囲で位置を調整する
希望する場所まで移動できない場合は、既存の排水立て管や配管に近い範囲で位置を調整できないか検討しましょう。
水回り設備を排水立て管から遠ざけるほど、排水管が長くなり、必要な勾配を保つための高低差を確保しにくくなります。 既存の配管を利用しやすい範囲であれば、レイアウトを変更できる可能性があります。
たとえば、キッチンを大きく移動できなくても、向きを変えたり、壁付けから対面式に変更したりすることで、リビング・ダイニングとのつながりを改善できる場合があります。
床を上げて配管スペースを確保する
床下のスペースが不足して排水管を通せない場合は、床を上げて配管スペースを確保する方法もあります。
排水管には排水を流すための勾配が必要です。既存の床下だけでは必要な高低差を確保できなくても、床の一部または広い範囲を上げることで、配管を通せる可能性があります。
ただし、床を上げれば、その分だけ床から天井までの高さが低くなります。一部だけ床を高くする場合は、隣接する空間との間に段差が生じることにも注意が必要です。
段差は日常生活でのつまずきやすさにも関係するため、配管を通せるかだけでなく、天井高やバリアフリー性なども含めて検討しましょう。
設備の向きや周辺の間取りを見直す
水回りを大きく移動する目的が「家事動線をよくしたい」「リビングを見ながら料理したい」「洗面所を使いやすくしたい」といったものであれば、設備全体を別の場所へ移さなくても実現できる可能性があります。
たとえば、キッチンは位置を大きく変えずに向きや形状を変更する、洗面所は洗面台や収納の配置を見直すといった方法です。浴室を移動するのが難しい場合も、隣接する洗面脱衣室の広さや出入口の位置を変更することで、入浴や洗濯の動線を改善できることがあります。
水回りの移動は、あくまで希望する暮らしを実現するための手段の一つです。希望する位置まで移動できない場合は、「なぜ水回りを移動したいのか」を改めて整理し、その目的を実現できる別の間取りや設備配置がないか検討しましょう。

中古マンション購入後に「水回りを動かせなかった」を防ぐには?
中古マンションを購入して水回りのリフォームを予定している場合は、購入前に希望する工事ができるか確認しておくことが重要です。
「リフォーム可能なマンション」であっても、希望する場所までキッチンやトイレなどを移動できるとは限りません。購入後に「希望していた間取りにできなかった」とならないよう、次のポイントを確認しておきましょう。
管理規約・使用細則を確認する
まず確認したいのが、マンションの管理規約や使用細則です。マンションでは、専有部分であっても自由にリフォームできるとは限らず、管理規約などによって工事内容が制限されている場合があります。
水回りの移動を予定しているなら、リフォームに関する規定に加えて、専有部分と共用部分の範囲なども確認しましょう。また、仲介会社などから「リフォーム可能」と説明を受けても、それだけで希望する水回りの移動ができるとは判断できません。
「キッチンを現在とは別の場所へ移したい」など具体的な希望がある場合は、その工事が管理規約上認められるのかまで確認しておくことが大切です。
図面で配管の位置を確認する
水回りの移動を考えている場合は、現在のキッチンや浴室などの位置だけでなく、排水立て管やパイプスペースの位置も確認しましょう。新しい水回りから排水先まで排水管を通す必要があるため、既存の排水立て管との位置関係によって移動できる範囲が変わります。
設計図書などを確認できる場合は、排水立て管やパイプスペース、既存の配管経路などを確認しておくと、希望する間取りを検討する際の参考になるでしょう。ただし、図面だけですべての状況を判断できるとは限りません。
実際の床下スペースや現在の配管状況などについては、必要に応じてリフォーム会社による現地調査を行い、施工できるか確認する必要があります。
契約前にリフォーム会社へ相談する
購入したいマンションが決まっている場合は、契約前の段階でリフォーム会社に希望する間取りを相談するのも一つの方法です。
「キッチンを対面式にしたい」「トイレを別の場所へ移したい」「浴室と洗面所の位置を入れ替えたい」など、できるだけ具体的に希望を伝えましょう。
リフォーム会社に相談することで、既存の配管や床下スペース、建物構造などを踏まえて、希望する水回りの移動が実現できそうか検討してもらえます。管理規約などの確認もあわせて進めるとよいでしょう。
▼中古マンションの購入前に確認したい項目をさらに詳しく知りたい方はこちら
マンションの水回り移動は「配管・構造・管理規約」を確認して判断しよう
マンションでも、条件が整えばキッチン・トイレ・洗面所・浴室などの水回りを移動できます。ただし、希望する場所へ自由に移動できるわけではありません。
特に、排水管の位置や勾配、床下スペース、建物構造、専有部分と共用部分の区分などは、水回りの移動範囲を左右する重要なポイントです。さらに、マンションごとの管理規約や工事に関するルールも確認する必要があります。
希望する場所まで移動するのが難しい場合でも、設備の位置や向きを調整したり、床を上げて配管スペースを確保したりすることで、希望する間取りや生活動線に近づけられる場合があります。
中古マンションの購入とあわせて水回りの移動を検討している場合は、購入前に管理規約や配管、建物構造などを確認し、希望するリフォームを実現できるかリフォーム会社へ相談しておきましょう。
水回りの位置を変えたい方は、「どこへ移したいか」だけでなく、「今の間取りで何に困っているか」も整理しておくと、移動以外の方法も含めて検討しやすくなります。
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